第12章 Hi!
「…? 俺がどうした?」
『あ、ううん。 若利くんと出会えて嬉しいなって』
「穂波はなぜここにいる?」
『わたしはこっちの大学に行くんだ。来週から』
「そうか。 白布とは元々遠距離だったと聞いた」
『え? あ、うん? 白布くんとはもともと遠距離だけど、
彼とは初めて、長い時間離れて暮らすよ』
「白布は、恋人ではないのか?」
『ん、残念ながら』
「残念? 白布は、一途なやつだぞ」
『あっと、そんな素敵な人の想いにに応えれないことが残念だけど、みたいな』
「あぁ… そんなことはないだろ。きっと、幸せに笑っていてくればそれで良いものなんじゃないか」
『若利くんも、経験があるの?』
「いや、ない。 ただ父親のことをそう言う人がいた」
『……お父さんが若利くんを想う気持ちみたいなことかな』
「あぁ」
こんなに大きくて強い人なのに、
思いっきり抱きしめたくなる。
不思議な、人。
『お父さんに会うのは久しぶり?』
「あぁ、小学生以来だ」
『わぁ…♡』
「1週間ほど滞在する」
『うん 濃厚な時間になりそうだね』
「また会えると良い」
『また会えると良いね。でも、これからだね』
「……? あぁ、これから」
『お父さんはアーバインに家があるんだね、ここは治安がいいとはよく聞く町。
どこかに勤めてみえるの?』
「トレーニングコーチをやっている。
この町のポーラベアーズというバレーチームに所属している」
『へー… へー? んー? それって、空井さん?』
「あぁ、そうだ」
『えー! わたしが今日、アーバインに来たのは空井さんに会うためだよ。
そうだそうだ、明日は息子さんがみえる、久々に会うんだっておっしゃってた。
えー!若利くんだったんだぁ、すごいねすごいねぇ♡』
「あぁ、すごいな」
声の調子がほとんど変わらない。
表情も、でも幾分か、変化が見える気がする。
数ミリくらいの、小さな小さな、変化。
面白い人。
いつも白布くんから聞いてばかりだったけど、
覚さんから若利くんの話、聞いてみたいなぁって思った。
きっと覚さんにはすぐにわかるんだろうな、若利くんのこの、見えにくい変化が。起伏が。
やっぱり、たまらないコンビってある。