第10章 ゴミ捨て場の決戦!
立ち尽くす僕の方に向かって黒尾さんが歩いてきて
「安心してよ、指一本触れてないから」
そう言って立ち去っていった
歩と目が合う
熱を帯びた表情の彼女を見ていられなくて僕は…
「ツッキー!待って!」
彼女の制止を振り切ってその場を後にした
ああ、情けないったらありゃしない
歩の気持ちを信じるって決めたばっかだったのに、結局こうしてまた話も聞かずに逃げ出した
だって敵いっこないでしょ
指一本触れてない
黒尾さんはそう言ったし、実際そうだったのかもしれないけど
逆に指一本触れずに歩にあんな顔させるなんて…
僕が見たことのない表情を黒尾さんはいとも簡単に…
あの人が歩を好きなんだとしたら
僕に勝ち目なんてないんじゃないの
早歩きでどこに向かうともなく歩き続ける
頭の中をグルグルと答えの出ないモヤモヤがループし続けている
歩を好きでいる限り、ずっとこんな気持ちなのか
影山や縁下さん、宮侑に木兎さん、そして黒尾さん…
歩に好意を寄せる人はすごく多くて、みんなそれぞれに魅力的な人ばかりで
彼女が僕を選んでくれる自信なんて全然ない
そうだ
一旦今見たことは忘れよう
歩のことも今は考えない
今から始まる準々決勝に全てを注いで
この試合が終わってから考える
そうしないととても試合に集中できそうになかった
その後何となく歩の顔を見るのが気まずくて、ロビーの椅子に腰掛けて、鴎台の試合動画を見ていた
鴎台は影山がユースで一緒だった選手がいるだけじゃなく、伊達工並みのブロックシステムがあるチームだ
そこに山口が来て、隣に座り
「ツッキー!」
急に大声を出す
「?!何だよ」
「カモゲダイのブロックがどんなに凄くても、俺たちのサーブ&ブロックはぁけない!!」
「何???」
「俺たちのサーブ&ブロックは負けない!」
「よくもまぁ2回も言ったね」
少し間があってブファーーッと二人で噴き出す
「アッハッハ、カモゲダイってなに?!」
ひとしきり笑って
ああ…なんか分かんないけど吹っ切れた
今はただ目の前の試合を精一杯楽しもう