第12章 君への思い
「え、煉獄さん、道場の生徒さんとお買い物行くんですか?」
週末。煉獄さんの言葉に私は不意をつかれる。休みは煉獄さんと決まって一緒に居たので、煉獄さんが生徒さんと出かけるという珍しい事態に私は目をぱちくりさせた。
「ああ!名を、斉藤少年という!」
当の煉獄さんはとても楽しそうだ。生徒さんと仲がいいのは知っていたが、休日に一緒に出かけるくらいの間柄の生徒がいたとは。少年と言うくらいだから男の子なのだろうが、私は少し煉獄さんがこの世界で私以外の人と関わることが嬉しい半面、ほんの少し寂しさを感じた。これが子供が巣立つ時の親の気持ちなのかもしれない。こうして煉獄さんはいずれ遠くに行ってしまうのか。大袈裟にそんなことを思いながらしみじみとした。
「どこに行くんですか?」
「北千住というところだ!」
めっちゃ近所だった。
「北千住に何しに行くのですか?」
「む、それは秘密だ!!!」
煉獄さんは私から目を逸らす。なんだ?なんだなんだ怪しいな!私は煉獄さんのあからさまに隠そうとする違和感に逆にとても気になった。
「私も北千住行こうかな、ちょっと見たい本ありますし」
「何!?」
私がそう言うと煉獄さんは少し嬉しそうにした後「いや待て、斉藤少年には秘密だと言われたが…」と腕を組み、「まぁ途中まで共に行くのは問題あるまい」とにっこり笑った。なんだ?斉藤少年と何をしに行くんだ。
そんなことを話していると、唐突に煉獄さんが私の顔をまじまじと見つめてくる。なんだ?今日煉獄さんなんかすごい挙動不審だな。私はそう思いながらふと首を傾げると煉獄さんは顔を赤らめて目を逸らした。
「中彩、今日はなにか雰囲気が違わないか。」
煉獄さんのその言葉に私は「あぁ」と拳を手のひらに乗せる。
「今日はお化粧をしてるのです。」
「そうか!化粧をしているのか!」
そう、普段会社に行く時、私は化粧をしない。できるだけ多くの時間を睡眠に費やす色気のない女だ。だが、たまの休日気がむくと化粧をする。今日はたまたまそういう気分だった。
「その、とても似合っているな」
「そうですか?ありがとうございます」
あれ、煉獄さんってこんなこと言う人だったっけ?私は煉獄さんが落ち着かない様子で私を見ては目を逸らすその様子に、いよいよおかしいとじーっと見つめる。