第14章 愛しの"アノ人"
「(っ……怖い……)」
「はぁ。よし…これ以上は、本当にガマンできなくなりそうだから、今日はここまで、ね」
「……………」
「どうしたの?そんな引きつった顔してさ。なに?ひょっとして本当は、吸われたかったのかな?」
「違う…そんなんじゃ、なくて…」
「んふ。じゃあ、ボクが…怖くなっちゃったのか」
「そ、れは…」
「図星。ふふっ、分かりやすいなあ、お花ちゃんってば」
耳にキスをされ、ビクッと反応する。
「いいんだよ。もっともっと…ボクのことを恐れればいい」
「え?」
「恐れれば恐れられるほど…ボクは興奮する。引きつった顔のキミは、最高にセクシーだよ」
ライトくんのことが怖くて、引きつった顔で掌をギュッと握り締める。
「そろそろ他の薔薇を見に行こうか。ああ、今夜の薔薇は、本当に綺麗だねぇ…ふふふふふっ」
「(やっぱり…ここから直ぐにでも逃げ出さなくちゃ…早く…一刻も早く…!)」
じり…っと足が一歩、後ろに下がる。すると、他の色に混ざって、一輪だけ見たことのない不思議な薔薇が咲いているのに気付く。
「この薔薇…」
「んー?どれ?」
「水色と緑が混ざってる」
「本当だ。こんな薔薇、初めて見たよ。珍しい品種だったりして」
半分に色分けされた水色と緑の美しい薔薇。夜の月明かりに照らされたその薔薇は他の薔薇よりも、とても綺麗で目を奪われた。
「すごく綺麗」
感動している私にライトくんが小さく笑って、再び薔薇に視線を戻して言った。
「まるでボクとお花ちゃんみたいだよね」
「え?」
「ひとつの枝からふたつの色が生まれた不思議な薔薇。周りは赤い薔薇ばかりなのに…この薔薇だけ、色が異なってる。しかもボク達の色を表してるみたいだ」
「(ライトくんの緑色の瞳と私の空色の瞳。確かに私達の色みたい…。)」
「んふ…ボク達、ひとつになっちゃったね」
「っ……そういうこと言わないで」
「照れちゃって、可愛いんだから」
「ライトくん…!」
愉しそうにからかってくるライトくんに反抗するも米神にチュッとキスをされる。
「これからもボクを愉しませてよ、お花ちゃん」
"お断りします"と返したかった…。
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