第14章 愛しの"アノ人"
「さあ、こっちにおいで。もっとよく見ようよ。ボクは薔薇の花が大好きなのさ。憎らしいほどに…綺麗だろう?」
たくさんの数の薔薇があちこちに咲き誇っている。赤い薔薇、白い薔薇、珍しい色の薔薇まで、よりどりみどりだ。
「特に。こうして夜に咲く薔薇は最高さ。まるで───。」
「まるで…?」
「っ……まるでねえ、お花ちゃん、キミみたいじゃないか。いじらしいほどに美しいからね。ふふふ。」
ライトくんは誤魔化すように私の名前を口にした気がした。
「…からかわないで。本当は、そんなこと思ってないんでしょ?」
「ふふ、ボクを疑うの?イケナイ子だなあ…まあいいよ。キミがどう思おうともね。」
「(もうライトくんのからかいにはうんざり…。)」
「ボクは…こんな風に…キミをむしりとって無茶苦茶にして…」
薔薇をむしり取ったライトくんは手のひらでぐしゃぐしゃに潰してしまう。
「こんな風に…食べちゃいたいね。……んぐ。」
「ら、ライトくん。そんな風に食べたら…薔薇が可哀想だよ…」
「そお?すっごく…美味しいよ?ほら、お花ちゃんも一緒に楽しもうよ」
「わ、私は……」
「ほらぁ…これなんか、すごく、イイ感じ…」
「……あっ!!いたっ……!」
指に薔薇のトゲが刺さった。
「あれ?ごめんね。トゲ残ってたのか…見せて」
「っ…大丈夫だから、気にしないで。」
「そうはいかないよ。ボクの大切なお花ちゃんの一大事なんだからねぇ?」
「ちょっ……!」
「あれあれあれ〜?全然平気じゃないじゃないの。指から血が出ちゃってるよ?」
大丈夫だと言っているのにライトくんは強引に腕をたぐり寄せた。
「放して……っ!」
「ダーメ。治療しないとねえ。んふ……んんっ。ちゅっ」
「っ………!!」
「んんっ……んっ……チュッ……ああ……お花ちゃんの血……甘いな……んっ……チュッ……」
「やめて……!」
「くくくっ…それはダメに決まってるじゃない。ボクをなんだと思ってるの?」
「お願い…放して…!」
「血の臭いには人一倍敏感な…ヴァンパイア、だよ?このまま押し倒されて、キバを押し当てられないだけでも…感謝してよ……んっ……チュッ。」
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