第51章 モレンドに敬意を表して【渋谷事変】
「あの世で弟たちに詫びろ」
壊相、血塗――二人の顔を思い浮かべ、トドメを刺すべく、脹相は憎悪と共に拳を握りしめた――瞬間、ドクンッと身体が不自然に脈を打った。
「あ、あぁ、あッ⁉」
身体から血の気が引き、割れるように頭が痛みだす。
「何、だ?」
痛む頭を抱え、現実から逃れるように虎杖から距離を取り、ふらつく身体で男子トイレから出た。
突如 脳裏に溢れ出す、“存在しない”記憶――……。
壊相や血塗、受肉できなかった他の六人の兄弟たちも一緒に、兄弟水入らずで暖かな木漏れ日の下、食卓を囲む。そんな穏やかで幸福な時間。
そこには確かに“虎杖の姿もあった”。
虎杖が「ほら、兄ちゃんも」とパンを差し出してくる姿に、自分は微笑ましさを感じている。
「どういう、ことだ? なんで、オマエが……」
虎杖に兄と呼ばれることなどあり得ない。
そう分かっているはずなのに、脹相の頭はそれを否定してくれなかった。
* * *
「いた……」
菜々子と美々子は男子トイレで虎杖を見つけた。
「生きてるよね?」
「うん」
手ひどくやられているのか重傷――いや、死にかけていると言っても過言ではないだろうが、とりあえず生きてはいるようだ。
「始めるよ」
そう言って、菜々子は制服のポケットから布に包まれた細長いモノ――【宿儺の指】を取り出した――……。