第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
「【天雲に 近く光りて 鳴る神の 見れば畏し 見ねば悲しも】」
轟音を鳴らし、バチバチッと爆ぜた稲妻が呪霊を切り裂いた。だが、見たところ【大蛇】の攻撃も、詞織の攻撃も届いていない。
格が違いすぎる。逃げないと、庇っている術師たちを含めて全滅だ。
詞織は頑固だ。こうなったら梃子でも動かない。かといって、詞織を残して自分が救援を呼びに行くなど論外だ。
――詞織と一緒に死ねるなら、それはそれでアリだ。
そこまで考えて、伏黒は頭を振った。
違う。詞織を死なせるなんてナシだ。星也や星良に申し訳が立たないし、目を覚ました津美紀を泣かせることになる。
――くそっ! どうしたら……。
『……――助けてあげましょうか?』
顔を上げると、詞織の瞳が血を固めたような紅く染まっていた。
「オマエ……神ノ原、詩音……」
『あら。気安く呼ばないでくれるかしら、伏黒 恵』
けれど、すぐに詩音は何かに操られるように顔を背ける。
「勝手に出てこないで」
『ふふ、つれない。でも、このままじゃ全員 死ぬわ。あの薄汚い呪霊に殺されてね』
そこへ、呪霊の大きな手のひらが再び迫った。思わず詞織を抱きしめ、呪霊に背を向けて彼女を庇う。
『――【オン・アロリキャ・ソワカ】』
パンッと手のひらが弾かれ、呪霊が大きく仰け反った。泉に一滴の血を垂らしたように、詞織の夜色の瞳が濁る。