第56章 伸ばした手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
『へぇ。なかなか やるじゃん!』
真人の手のひらが伸びてきたのを、順平は紙一重で躱した。順平の後ろから【澱月】の毒突きが放たれる。
『うぉっ! 危ない……なっ‼』
回し蹴りが腹に命中し、ビルの壁に激突した。壁に亀裂が入り、パラパラと細かな石が音を立てて落ちていく。
「クソッ‼」
ダンッと地面を打つと、真人の腕がしなる鞭のように変形した。それがピシッと地面を抉り、順平を狙う。
「はっ……!」
釘が飛んできて、流された呪力が真人の腕を吹き飛ばした。
「吉野、一旦 落ち着い……」
「邪魔するな!」
駆け寄って止めようとする釘崎の腕を振り払う。すると、彼女は盛大に舌打ちをし、拳を握りしめた。
「こンの大バカ‼︎」
ゴチンッと釘崎の拳が順平の頭に据えられる。突然の激痛に思わず「いった……⁉」と呻き声を上げた。
「目ェ覚ませ! コイツがどんだけ強いか、あたしよりアンタの方が知ってるはずよ! そんな闇雲に向かって勝てるわけないでしょ‼」
「う……それは……でも……っ!」
「アンタの気持ちなんて知らない。分かるはずもない。でもね、コイツがハラワタ煮えくり返るくらいムカつくのだけはよく分かるわ。オマエ、そんな しょーもない理由で吉野の母親 殺したのかよ」
釘崎が金槌の先を真人に向けて睨みつける。その表情は、特級呪霊を目の前にしているとは思えないくらい、どこまでも冷静だった。