第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「音柱様みたいに
そこまではっきりとは申し上げられません。
だけど…多分、許せると思います」
私の頬を辿るように動いていた口唇がふと止まり
ほんの僅かに離れた。
「ホントだな?
後から文句言っても受け付けねぇぞ」
脅しのような言葉で私を試す。
「文句なんかありません。
音柱様は本当に
私の気持ちをわかって下さらないんですね」
だから私も意地悪なんかを言ってみる。
「睦の、気持ちって?」
額を合わせ鼻先を重ねて
音柱様は私の目を覗き込む。
やっと目を合わせてくれたのは嬉しいけれど
やっぱり近すぎると思うのよ。
口づけでも
してくれるつもり…?
少しの期待を込めて、
「好き、ってこと…」
告白を決めたのに
まんまと言葉尻を奪われて
さっきよりも熱を持った口唇が
私のそれに重なった。
期待通りに訪れた口づけは
永遠のようにも感じた。
押し付けられた力の分だけ引いた顎を
大きな手に掬い上げられる。
離れては、また押し付けて
たまに食むような動きをする口づけに
溺れてしまいそうになった。
視界を塞げば感覚だけが研ぎ澄まされて
愛しい感覚に酔っていくばかり。
やっと、届いた気になった。
言葉なんかよりずっとわかりやすい。
こうして唇を重ねるだけで
どれだけの想いが伝わるだろう。
音柱様の想いと
私の想いが上手に絡み合って
…どうか
ほどけませんように…
そんな事を
本気で思ったんだ
「お前、ほんとお嬢様だったんだな…」
邸の中。
私の部屋。
ドアをくぐり室内を見た途端、
音柱様が感心したように言った。
「祖父が資産家だっただけです」
別にお嬢様扱いをされてきたわけじゃない。
家は広いし立派だったけれど
贅沢をしてきたわけでもないし…
「特に母は倹約家だったので」
「いやそれでもよ…」
確かに建物や調度品は西洋のものばかり。
でも私は、無いものねだりとでも言うのか
日本家屋が好きなのだ。
できればベッドでは寝たくない。
「私は音柱邸の方が好きです」
「…それは俺んとこに来たいという事でいいか」