第2章 :神業と出立と霹靂(そんな程度の女)
「仲間が反旗を翻すときがあるかもしれないと、最初から疑ってかかるんですか、リヴァイ兵士長は」
少し沈黙が降った。
「自分しか信じないとかいう、そんな一匹狼でもないが」
前で組み合わせているの手の指が落ち着かなく動く。いまから口にしようとしている質問の答えが、ちょっと怖いと思っていた。
「ボクや調査兵団の仲間のことは、どう思ってるんですか?」
逸れていたリヴァイの視線が、ぱっとに戻った。そう聞かれるのが思いがけなかったのか唇が半開きだ。ややして――
「信じてるさ。でなきゃ、壁外で巨人となんか闘えないだろう」
情がこめられた言葉尻だった。
死と隣り合わせの調査兵団には信頼が必要不可欠である。ゆえに団結力も強いのだ。
「よかった」
は下を向いて微笑んだ。ほっとした。仲間を信じられないなど寂しいじゃないかと思っていたから。
「だが覚えておけ。人の心や運命は移ろいやすい。いつどんな災難が自分に降りかかってくるか分からない」
「信じているものに、裏切られることがあるかもしれない、ってことですね」
ようやく素直に考えを受け入れたに、強い眼差しでリヴァイは頷いてみせた。
「あてにならないのなら、自分を鍛えて大事なものを守るほかないと、そう思わないか」
まっすぐにを見据えて、
「の守りたいものはなんだ」
「え」突然問われて戸惑う。
「対象は広い。それが生き物とも限らない」
「えっと……」イルカ雲から、ただの魚雲になってしまった空に上目しては考える。何も浮かばなくて首を傾けてもみたが、やはり思いつかなかった。
回答など出ないと分かりきっていたのだろう。待たずにリヴァイは言う。
「まだ見つかっていないのなら、きっとお前は恵まれていたんだろう」
強めの語調ではっきりと断言する。
「だがそれでは強くなれない。失うものがないときと、守るものがあるときに、人は真の精強になれる」
いつまでも甘いの尻を叩かれたような気がした。
守るものがないのは満たされているからである。守るものがないからって失うものがないわけでもない。すべて捨ててしまいたくなるような絶望を感じることがなかったのは、自由に生きてこられたからなのだ。