第16章 泣いてなんて、ないよ
その時、内線電話の音が私を呼んだ。
『ふぅ…。はい 中崎です』
興奮した気持ちを落ち着ける為、ひとつ息をついてから 受話器を持ち上げる。
《 お疲れ様です。こちら、受付なのですが…実は1階にプロデューサーにお客様が見えておりまして 。アポイントは取られていないそうなのですが、どうしても面会したいと、強く希望されております 》
アポを取らず、TRIGGERのプロデューサーである私に面会希望?そんなにはある事例ではない。
『その方は、どなたですか?』
《 それが…小鳥遊プロダクション所属でいらっしゃる、MEZZO" の 四葉環様 ご本人です 》
『……すぐに行きます』
私は、受話器を置いてから コンマ一秒も経たない内に椅子から腰を上げる。
外していたジャケットのボタンを留め、パソコンの電源を落としてUSBを抜き取って鍵の付いた引き出しへとしまった。
「どこ行くの?」
天の鋭い目が私を見上げる。
『少しだけ、席を外します。すぐにこの部屋に戻って来ますので、貴方達はどうぞ しりとりでも続けてくつろいでいて下さい』
「…ふーん」
「なんだ?来客か?」
こうでも言わなければ、彼らは絶対に私の後をついてくる。
最近、どう考えても私の事を暇つぶしの道具としか見ていないのではないか?という行動が多々見受けられるのだ。
いつものように遊ばれては堪らない。
しかし…。
私の嘘は通用しなかったようだ。
『…どうして、付いて来るんですか!』
「キミが嘘をついたから。
少し席を外すだけなら、わざわざパソコンの電源を落とさないし、USBも所定の場所には片付けない」
「だよな。そこまでして、俺達に見られたくない相手と会うのか?」
「たしかに、ちょっと気になっちゃうかな」
頼みの綱、龍之介までが私を追って、後を尾けてくるのだった。