第93章 選んだのは、こういう道だろ
「あっはは!ハル!宿題って!しかも、説得されて結局は自分でやるのかよ!」
「なっ!?じゃあトウマは、上手くイジめ出来るのかよ!」
「えっ!お、俺!?お、おう!出来るに決まってるだろ!よし。手本を見せてやるぜ」
「……」
(狗丸さんは、どうしていつも悪い男を気取りたがるのか。理解できない)
トウマは私を相手取り、堂々と告げた。
「おい。俺の為に、今すぐパン買って来いよ。ほら、これで。千円で足りるだろ」
『……お金はくれるんですね』
「え?普通、そうじゃねぇの?」
もしかすると、トウマは優しい奴なのかもしれない。
「なぁトウマ。パン食べたいの?」
「え、いや、べつに」
「え?じゃあなんでパン買いに行けって言ったんだ?」
「そ…そういうもんなんだよ!」イジめ=パシリだろ!
「目の前に、こんないっぱい肉あるのに?」
「……確かに。パンより肉食うよな、普通」
「そうだと思う」
2人のやりとりを前に虎於は、くくくっ と笑って体を揺らした。巳波は、2人にはイジめのセンスが壊滅的にない。と、つまらなさそうに呟いた。
「ん?あぁ、漫才はもう終わった?いやー面白かったよ!ありがとう!とりあえず今後は、巳波と虎於にイジめ役を託すとして…
そろそろ僕は帰るよ!飽きちゃったから!じゃあ、また明日ねー」
ひらひらと手を振って、場を後にする了。誰も、彼があっさりと帰るところを見ても引き止めない。きっと、あの男はいつもこうなのだろう。
それとも、彼ら全員が このあっさりした関係に居心地の良さを感じているのか。
正解は分からない。それよりも私は、了がここの会計を済ませてくれたのかどうかが気に掛かっていた。