第94章 抗うもの
「__帰ろう。サボ」
ゆっくりと手を差し出す。
ここにサボの幸せがあるとは、水琴には到底思えなかった。
「エースもルフィも待ってる。またあの根城で四人で過ごそう」
「……だめだ、水琴」
差し伸べられた手を切なそうに見つめ、サボは首を振る。
「分かったんだ。いくら逃げたって、あいつらは何度だって俺を連れ戻しに来る。俺の為じゃない、アイツらの名誉と面子の為に」
「っそれなら何度だって私が追い払ってあげる。こう見えて強いんだから」
サボの言葉に水琴は精いっぱいの虚勢を張る。安心して逃げられるように。彼が一番望む答えを選択できるように。
問題なんて何もないと言わんばかりに強気に振舞う。
「何度も追われるのが苦痛なら、いっそのこと海に出ちゃう?エースとルフィも連れて、四人で。
船長は交代でやったらいいよ。どうしても自分の船が持ちたいなら、独立するまででもいいから。
心配しないで。私だって海賊の端くれなんだから。
__……三人とも、私が海に、連れ出してあげるから」
ぺらぺらとまくし立てていた水琴は静かなサボの瞳に耐えきれず、だんだんとその視線を下に落とす。
だから、と震える声が小さく部屋に響いた。
だから。お願い。
この手をどうか取ってほしい。
「__それも楽しそうだな」
本当にその通りに思っているだろうサボの声音に水琴は顔を上げる。
しかし目が合えば、水琴の切なる願いは聞き入れられないのだと瞬時に理解した。
「水琴が強いのは知ってる。その気になれば今言ったように、俺たちを連れて海に出ることだって出来ることも。でもあいつらにはブルージャムがついてる。次逃げ出したら、エースやルフィだけじゃない、他の人間にどんな危害を加えるか分からない」
「……っ」