第18章 そしてWCは伝説となる
残されたあたし達の間には微妙な空気が流れる。時刻は夜9時半。明日の試合はあたしが9時半からと少し早い。朝のロードワークの事を考えると、あと30分もすれば就寝時間に変わる。
「朱音、僕はどうすればいい?」
『…征ちゃんさえ嫌じゃなければ、あたしと一緒にベッドで寝ませんか』
「僕が嫌なわけないだろう。安心しろ、変な事はしないよ」
征ちゃんは優しく微笑む。もう寝るかと聞かれたけど、あたしは明日のゲームプランを組み立てなければならなかった。立翔とあたる事だけを考えてきたあたし達にとって、藤ヶ咲との準決勝はかなりの大誤算だった。
「なら僕も付き合おう。それに明日は真太郎との試合、考えすぎという事はあり得ないからな」
征ちゃんは机にノートを広げる。心なしか少しわくわくしているようにも見え、同時に少し悲しそうにも見えた。だけどあたしは何も言わずに作業に集中した。そして30分後、部屋の電気を消してベッドに入った。ベッドの大きさは1人じゃ広いセミダブルでも、2人で入るとさすがに近くなる。征ちゃんの鼓動や呼吸音も聞こえてくる。
「朱音」
『はいいいいいいいっ!』
「ぷっ…なんだ、朱音も緊張してるのか」
『当たり前じゃない。この状況だもん』
「そうだな。…朱音」
『大丈夫だよ』
「…どういう事だ?」
『どういうって…不安なんでしょ、明日の真ちゃんとの試合。特に昔ずっと一緒にいた真ちゃんだもんね』
「…やはり朱音には敵わないな。では今僕がしてほしい事も分かるか?」
あたしは恥ずかしい気持ちを抑え、隣にいる征ちゃんを優しく抱きしめた。