第91章 *内密コール*
多くのものを見て多くの人間たちに触れてきたリリアだったが、どんなに時代が変わっても、どんなに技術が進歩してきても、ドラゴンの卵を孵化させる方法は一向に見つからないまま、150年という時が過ぎた
黒鱗城・揺籃の塔
リリア『あっという間に150年..か。俺ももう450歳..すっかりオジさんだ。これだけ巡っても、まだ行ったことがない場所があるのが驚きだ。世界ってのは、広いものだな。この150年で、外の大陸はかなり様変わりしたぞ。最近は様々な国で、夜の眷属にも渡航許可が降りるようになってきた。だいぶ旅がしやすくなったよ。
石を投げられることも減った..妖精と人間の対立は、人間の歴史の中じゃとっくに過去のものだ。どんなに抗っても人間(かれ)らの文明の発展は止められない。俺たち妖精はいずれ古きもの..御伽話の存在として忘れ去られていくだろう。だが俺は、これから生まれて悠久を生きるだろうお前を、御伽話の主人公にはしたくないんだ、マレウス。だから早くその狭っ苦しい卵から飛び出してこい。
外の世界は面倒なことも多いが、きっと卵の中(そこ)よりは楽しいぞ。なぁマレウス。お前が生まれたら、見せたいものがたくさんあるよ』
その言葉に反応するように卵の光は何度も点滅する。穏やかで静かな二人の逢瀬は永遠に続くかのように思われた
その時は突然に、ざわめく空が巻き起こした荒く吹く風に山が唸りを上げる日だった
"ヴァンルージュ殿、至急竜の都へ戻られたし。
殿下の卵から、急速に魔力が失われつつあります。次の満月を待たずに、星にお還りになってしまうやもしれません。
ヴァンルージュ殿には直接顔をお見せいただきたく.."
突然届いた手紙に息を乱しながら竜の都へと急いで走る。揺籃の塔の近くには、神妙な顔つきのバウルが近衛兵数人と共にリリアが来るのを待っていた
バウル『ヴァンルージュ殿!よくぞお戻りくださいました。うがっ!?』
リリアの姿に喜ぶバウルの胸ぐらを強く掴むと、鬼気迫る表情で詰め寄る
リリア『マレウスの卵が危ねえってどういうことだ!?』