第87章 *懐刀インパクト*
リリア『下手にいろいろ触るなよ。元は妖精族の家。何かしらの魔法がかかっていても不思議じゃねぇ』
『っ、けほっ、けほっ..!ぅぅ..』
ユウ『大丈夫?』
セベク『随分と埃っぽいからな..少しだけ片付けるか』
歩くたびに舞い上がる埃に咳き込むレイラを見かねて、警棒を軽く振り箒で床をはき始めた
セベク『床に人形が落ちている。動物が..鎧を着ているのか?ふっ、なかなか凛々しい顔をしている』
シルバー『壁の柱を見ろ。年齢ごとに、背丈が記してある。子供のいる家庭だったようだ』
柱に書かれた背を表す横線をなぞりながら、シルバーは元の持ち主たちの賑やかなやりとりを想像し、小さく笑みをこぼした
リリア『..子供がいるとこんなにとっ散らかるのかよ』
シルバー『ヴァンルージュ殿は..綺麗好き、なのですか?』
リリア『いいや?第一、俺は散らかすほど物を持ってない。だが..マレノア様の卵が孵ったら、なんだかんだで俺が子守を押し付けられるに決まってる。そいつが散らかした後は、俺が片付けをさせられるわけだろ?考えただけでも気が重いぜ』
来たる世継ぎの子守や世話の光景に、辟易とした表情でため息をついた
リリア『そもそも俺は、子供が嫌いなんだよ。うるせぇし、勝手だし、すぐ泣くし..何より弱い。
ちょっとしたことでへばっちまうような生き物の面倒を見るなんざ寒気がするね』
シルバー『...』
何も知らないとはいえ、育ての父親からの素直な言葉にシルバーの顔が曇り始める。自分を育ててくれた父親が子供嫌いなことを初めて知り、ショックを隠せず銀の瞳が影を落とす
『シルバーさん..』
セベク『何かしらのきっかけがあれば、お考えが変わるかもしれません。その、例えば..家族が増える、とか』
シルバーの様子にセベクは扶助するように言葉を重ねる。今までの彼からは余り想像できない言葉に、シルバーは胸を強く打たれた
リリア『家族だぁ?この先も所帯を持つつもりはねぇよ。
これまでも、これからも俺は..』
悲しそうに視線をそらすと、こちらを見上げる深紅の瞳が不思議そうにしていた
リリア『(こいつにも、余計な気を持たせちまった..)』