第1章 もう、泣かないで
思わず彼女の顔を見ると、暗く淀んだ瞳ではあるけど、わずかに微笑んでいた。
頬がかすかに引きつっていたのは、恐らく長い間微笑む事すら無かったんだろう。
冷たくて、小さな手。
だけどその奥にほんの少し温もりを感じた気がした。
何かこの子に、俺がしてあげられる事はなんだろう。
牢を壊して逃げる事は自体は可能かもしれない。でも、その後逃げ切れる可能性なんて知れている。
それに、こんな時に俺の事を気にかけて来る優しいこの子には、何にも憚られずに笑顔で暮らして欲しい。
「俺・・・強くなる」
「え?」
「俺さ、鬼殺隊に入ったはいいけど全然弱くてダメダメでさ、俺が恐くて気を失ってる時に仲間が鬼を倒してくれたり、少し前なんて助けに行った先の子供に助けられちゃってさ・・・ホントに情けないんだけど・・・今だって回復訓練がうまくいかなくて訓練さぼりっぱなしでさ・・・逃げてばっかりだよ。ははっ」
自嘲気味な笑いが零れた。
「だけど・・・こんな俺でもまだ出来る事があるかもしれない。今はまだまだかもしれないけど、君をこんな目に会わせることが無いくらいに強くなるよ!だからさ・・・」
彼女が訝しげに俺の言葉の続きを待っている。