第7章 トラ男とパン女の攻防戦
勝手な想像だけど、ローはもう少し控えめな愛情表現をしてくるタイプかと思っていた。
なにせクールな人だから、稀に見かけるようなバカップル相当な真似をするとは考えにくい。
が、いざ付き合ってみると、先ほどの寝かしつけといい、ローは過度なスキンシップを好むタイプだった。
街中で手を繋いだり、マンションの下でキスをしてきたり、アブサロムに見せつけるためのパフォーマンスかと思いきや、あれはデフォルトだったらしい。
今も平気な顔をして肩を抱いてくるが、対するムギは堪ったものじゃない。
(やっぱり、近いし狭い……。)
モリアが購入した三人掛けソファーは無駄に大きい。
座るスペースは十分すぎるほどあるのに、今のムギたちときたらみっちり一カ所に固まっていて、せっかくのソファーが泣いている。
「あの……、ちょっと離れてくれません?」
「は? なんでだ。」
「いや、だって、そのぅ……。」
あんまり近すぎると、心臓が高鳴ってドキドキする……なんて乙女らしい本音を口にできるはずもなく、飛び出たセリフはいつもの憎まれ口。
「暑苦しいんで! 重いし!」
誤魔化すにしても、もう少し言い方というものがあったと思う。
けれども好きな人に、それもとびきりイケメンな彼氏に間近で理由を問い詰められたら、心にもないセリフだって飛び出るもの。
「お前は、ほんとにもう少し……ああ、いや、いい。俺もいい加減、期待するだけ無駄と学習した。」
「ど、どういう意味ですか!」
「そのままの意味だろうが。その可愛くねェ口が、どう素直になっていくのかが見ものだな。」
可愛げの欠片もない嘘は、容易くローに見破られている。
変な誤解を生むよりかは何倍もマシだけど、その代償と呼ぶべきか、ローの体重がじわじわムギの方へ移動してきている。
「え、ねえ、重いんですけど……。」
「ああ、寄り掛かっているからな。」
「寄り掛かるなら、背もたれへどうぞ。」
細身でもしっかり体重があるローの身体を預けられれば、あっという間にムギは傾いた。
片手をついて支えてみても、迫りくる猛獣を宥められそうにない。
なんだか少し前にも、同じような出来事があった気がする。