君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第23章 passionato…
「でもね、一見適当にも見えるんだけど、実は心の底に凄い…俺なんかが想像出来ないような苦悩を抱えててさ…」
何気ない一瞬に、不意に見せる寂しげな横顔…あれは苦悩以外の何物でもなかった。
俺はその顔を見る度、胸が苦しくなるのを感じた。
本当に苦しんでいたのは、智本人なのに…、まるで自分のことのように…
「でも結局別れたんすよね?」
「うん…、いろいろあってね…」
「じゃあもう…」
「そうだね…、もうそろそろ見切り付けなきゃいけないんだろうけどさ、なかなか…ね…」
三年だ…、三年待っても智が俺の前に現れることはなかった。
もしかしたら新しい恋人でも…、そう思わなくもない。
「兄貴にそこまで思わせるって、相当イイ女なんでしょうね…」
カウンターの上に両腕を組み、今にも閉じてしまいそうな目で俺を見上げて来る。
何一つ疑いを持たない目で…
俺は大将から出された徳利を受け取ると、空のまま転がっている上田のお猪口に酒を注ぎ、俺のお猪口にも注いだ。
「女じゃないんだ…」
そう呟きながら…
「は? ちょっと待って…、俺意味分かんないんすけど…」
それまで虚ろだった目が、一気に見開かれ、戸惑い…なんだろうな、口元が引き攣っているようにも見える。
「男って…、冗談すよね?」
明らかな嫌悪を、俺は上田の表情から感じた。
でも俺は気にすることなく首を横に振ると、
「冗談なんかじゃないよ…、男なんだ…」
自分の気持ちを偽ることなく、そう言った。
「あ、でも勘違いすんなよ? 愛した人が“たまたま”男だった、ってだけで、実際はそうじゃないから…」
「で、でも…」
なかなか受け入れられないのか、上田が戸惑いの声を上げる。
そうだよな…、俺だってもし逆の立場なら、今の上田と同じように戸惑うだろうし、もしかしたら嫌悪感を抱くことだってあるかもしれない。
男が男を愛する…、いや男に限らず女性同士であったとしても、同性を愛することは、それだけで罪だと…、そう思われてしまうんだろうな…