第30章 映る
……とびっきりの美人だなんて!
いくらベンがお調子者だからって、言っていいことと悪いことがあるわ。
マヤは過分な世辞を言われたと思って、軽く眉を吊り上げた。
「美人だなんて、からかわないで」
「何を照れてんだ。本当のことだよ、なぁ?」
ベンは軽い調子で答えながら、ちゃっかり皆を押しのけてマヤの隣に座った。
「うん、ベンの言うとおりさ。オレなんかもう夢中なんだけど」
「俺も好きになっちゃった」
「一目惚れした!」
ベンだけではなくユトピアの駐屯兵は皆こんな調子なのか。
美人だの可愛いだの、好きだの惚れただの…。
……やっぱりこの親睦会はペトラの言うとおりに “お見合いパーティー” なんだわ。だからみんな恋人を作ろうとしてるのね。でも私は…。
当然マヤには、そんな気はさらさらない。
「ベン、悪いけど私にはそんな気はないのよ」
他の者に聞こえないほどの小さな声で、隣のベンにささやいた。
「そんな気って?」
「だから、ほら、この集まりって、もともとベンがペトラに恋人が欲しいの?って訊いたことから始まったでしょう?」
「あぁ、そうだね」
「ペトラはそうかもしれないけど、私はそうじゃないの」
「そうじゃないって…、あぁ! もしかして彼氏がいるのか!」
最初はマヤに合わせてささやき声だったベンなのに、急に大きな声を出す。
「え! 君、恋人いるの?」
「マジかよ、早く言えよ…」
「いやオレ、二番の男でもいいぜ?」
「二番じゃなくてさ、彼氏から略奪するって手もあるんじゃね?」
急に盛り上がるマヤの取り巻き連中。
「ベン、本当に困るわ。私、普通に調査兵としての親睦会だと思って…」
「わかったわかった!」
ベンはこれ以上マヤを困らせてはいけないと、決断してくれた。
「おいお前ら。非常に残念な知らせだが、マヤには恋人がいる。そしてその恋人とはラブラブだ。今ここには普通に晩メシを食う親睦会として参加している。だからマヤをモノにしたいとか不埒な考えのやつは席を外してくれ。望みなしだからな」
「望みなしかどうかは、わからねぇだろ!」
不満そうな駐屯兵にベンは言いきった。
「いや、ない。俺はマヤの相手を知ってる。お前らにつけ入る隙はない」