第30章 映る
「はっはっは!」
ベンの通夜などとひどい言いぐさを豪快に笑い飛ばしたのはシムズ隊長。
「通夜か! そりゃあいいわい。確かにリヴァイ兵長の桁外れの強さの前では、静まりかえるかもしれんな」
シムズはお気に入りのベンの言葉選びがツボに入ったのかしばらく嬉しそうに笑っていたが、ふと真剣な顔をした。
「笑っている場合ではないな。リヴァイ兵長…、巨人の討伐話をしてもらいたいのだが、ベンの言うようにきっと兵士たちが萎縮してしまう。そこでどうだろう、巨人にまつわる話はリヴァイ班に任せてわしと飲みにいかぬか」
「………」
……ユトピアの駐屯兵と調査兵が交流するのはいい。リヴァイ班が巨人の討伐話をするのも。駐屯兵が俺がいると緊張するとか萎縮するとか…。馬鹿馬鹿しいが、もしそうならば俺抜きで勝手にやればいい。確かに俺がいない方が、あいつらも息抜きになるかもしれねぇ…。
そこまではいいが、なぜ俺がシムズと飲みにいかないとならねぇんだ…。
「なぁどうだろう? わしもあのリヴァイ兵長とサシで飲んだとなると箔がつく」
「………」
……てめぇに箔をつけるために飲むのかよ。
眉間に皺を寄せて黙っているリヴァイの沈黙をポジティブにとらえて、シムズは屈託なくリヴァイを誘う。
「頼むよ、若い者は若い者同士で盛大に親睦を深め、わしら年配者は静かに二人で…、な?」
何が “な?” だとは思ったが、その後もしつこく誘ってくるので面倒になって首を縦に振る。
その途端にベンがひゃっほーと文字どおり飛び跳ねて歓声を上げた。
「ありがとうございます、リヴァイ兵長! これで俺ら駐屯兵の有志とリヴァイ班を含む調査兵の親睦会、そして兵長と隊長のサシ飲みが実現ってことですね! 嬉しいなぁ、ね、隊長?」
「あぁ。まったくだ」
今にも手を取り合いそうな様子で笑みを交わして喜んでいる二人を見ていると、なんだかリヴァイまでうっかり笑いそうになる。
通夜などと失礼なことを言われたはずなのに、ベンの天然な無邪気な態度に接するといつの間にやら消し飛んだ。
……シムズもすっかりこのベンの邪気のなさにやられているよな…。