第29章 カモミールの庭で
「お父さん、今兵長が言ったの… 合ってる?」
「あっ、あぁ…。兵士長の言うとおりだ…」
「兵長、すごいです! 」
マヤの歓喜の声がジョージには遠くに聞こえた。ショックが、まだつづいている。
……ありえない、完璧に言い当てるなんて。
「兵士長、驚いたよ…。紅茶通だといっても、これほどとは。何か…、以前に紅茶にかかわる仕事でも…?」
「いや。俺はただ、紅茶が好きなだけだ」
「だが今までどんな紅茶好きでも、俺のブレンドのわずかな変化に気づくことはあっても、“夏だから口当たりを軽くした” とか “冬は濃厚でまろやかになった気がする” 程度で、調合内容を言い当てた男なんて一人もいなかった…。兵士長、あなたはすごい」
「別に…。ただ頭に浮かんだことを言ったら、まぐれ当たりしたんだろうよ」
「いや、そんなことはない! 適当に言ってすべてを完璧に言い当てるなんて考えられない。本当にすごいよ…」
自身を感嘆のまなざしで見つめてくるジョージに対して、リヴァイは誠意をこめて言葉を返した。
「すごいのはウィンディッシュさんだ。俺は飲むだけで、ウィンディッシュさんみてぇに美味ぇ紅茶をブレンドすることはできねぇからな」
「ありがとう、兵士長。言い合っても仕方がないし、素直に受け取っておくよ」
「あぁ、そうしてくれ」
父ジョージとリヴァイの会話を聞いていたマヤが、話をまとめた。
「ふふ、兵長はお父さんと同じ “紅茶バカ” なだけよ」
「紅茶バカか! あはは、そうだな! 父さんは確かに紅茶バカだ」
「紅茶バカはね、三人いるのよ」
「……三人? 兵士長と父さん以外に誰かいるのか?」
「そうよ。ねぇ、兵長?」
マヤに話を振られたリヴァイは、仕方なく説明を始めた。
「もともとはウィンディッシュさんとヘルネにある紅茶専門店の爺さんのことだったが、その爺さんが俺もバカだと言い出した。俺はそのつもりは全くねぇんだが…」
「なるほど。紅茶バカの紅茶専門店店主のお墨付きか…。それなら間違いなく兵士長は、立派な紅茶バカだ! なにしろ俺のブレンドの変化を当てられたしな」
「ウィンディッシュさんまで…。勝手に言ってろ」