第8章 苦い再会
「有難う鏡花ちゃん。でもこれはわたし一人の問題よ。それに、またわたしの所為で事件に巻き込まれたら厭でしょう?」
「一人で出来るの?」
鏡花ちゃんは真っ直ぐわたしを見据えた。その目は少し揺らいでいる。
「なぁに、心配になった?」
揶揄う心算で問うてみると、鏡花ちゃんは真剣な表情で「うん」と頷いた。
「心配だよ。だってお姉さん、すぐに無茶するから……」
「わたし鏡花ちゃんより歳上よ? それに、無茶しないと生きていけないでしょう」
「だったら私も無茶する。無茶してでもお姉さんと一緒にいる」
「それは駄目よ」
わたしはすぐに否定を挟んだ。鏡花ちゃんが不服そうな顔をする。
「貴女が傷ついたら他の人が心配するでしょう? だから怪我しない内に帰りなさい」
「……じゃあ、一つ聞いていい?」
「何?」
「私が傷ついたら心配する人がいるって言ってたよね。……じゃあ、お姉さんには誰も居ないの? お姉さんが傷ついて悲しむ人は居ないの?」
鏡花ちゃんは感情を昂らせてぎゅっと携帯を握り締めた。わたしはふっと息をついた。
「さぁね。もう家族はみんな死んでるし、誰も居ないんじゃない?」
「そんな事ない。お姉さんが居なかったら私は厭だ」
真っ直ぐな黒い瞳。嗚呼、眩しい。眩しすぎて直視出来ないくらいに。
わたしは目を逸らした。
「有難う鏡花ちゃん。でもね、わたしは前の “わたし” とは違うの。異能も変わってしまったし、何よりこの地を一度離れてたんだから」
人も殺してしまった。もう皆の知ってるわたしじゃないのよ。自分に云い聞かせる様にわたしはそう云った。鏡花ちゃんは更に携帯を強く握り締めた。
「お姉さん、探偵社に戻って来ないのね……?」
縋るような瞳に、わたしは小さく溜息を吐いた。
「出来るなら戻りたいわ」
「じゃあ!」
「でも考えてみて。一度逃げ出したのにノコノコ戻って行けると思う?」
だから駄目なのよ。わたしがそう云うと、鏡花ちゃんは泣きそうな顔になりながらぐっと唇を噛んだ。
「……判った。お姉さん、また会えて嬉しかった。さよなら」
「バイバイ、鏡花ちゃん」