第2章 桜の前
「なんでこの子がその構成員に襲いかかってたのか、ちゃんと聞いた?この子は理由も無しに誰かを襲ったりなんてしないはずだよ」
「……何が言いてぇ」
「君、一方的にリアちゃんのこと悪者にして怒ろうとしてたんじゃあないのかい」
何かに気が付いたようなその人。
『いつから太宰さんそんな変態になったの?見てなかったくせに気持ち悪』
「君の事ならこれくらい分かるさ。ね?友人は持っておくべきだろう?」
『ああごめん、変態は元からだった。…餓鬼っぽいって思ってんでしょ、どうせ』
「いいや?私だって、信頼してる人間にそんな風にされたらどうしてだって思ってしまうさ」
ぽふ、と頭に乗せられる手。
次第にそれで撫でられて、気が緩んで完全に変化してしまう。
九本生えた尾…袴姿の、耳の生えたただの狐。
私はこんなにも貴方と違う。
「はいはい、泣きなさいな。怒ったふりしなくっていいから…怖かったんでしょう?悲しかったんでしょ??」
生えた耳を両手で塞いで、丸まった体を隠すように尾を被せる。
『…好きに、すればいいじゃない……説教でも、なんでも……か、かって、来なさいよ…』
「……お前、なんで立原に襲いかかったんだよ。…順番が逆になってた…怖がらせた、のも俺が原因だ。お前のせいじゃない」
『………見てたら殺したくなるような面してただけよ』
「嘘つくな、そんなわけねぇだろ。あいつ一応組織の中じゃあまともな奴だぞ?口は多少悪くても、根は単純で良いや『幹部の事、怪しんでた』…うちには怪しむべき幹部ならいるからな、確かに」
下手な争いは生むべきじゃない。
あの男は、確かに私や中原中也に恨みはなかったようであるし。
全てを表沙汰にはしなくてもいい。
『私のこと見て…その上司のこと、今度は少し疑った』
「!!!…、そりゃあ、どういう…」
『…忠誠心の高い人なのよね、あの人。…それは立派なものよ、だから忠告だけしておいたの』
「…ああ、リアちゃん君もしかして、」
中也のこと、護ろうとしたの…?
私の気持ちを代弁するかのようにそう言った太宰さんの胸板に、弱々しく拳をぶつける。
『な、に言ってんの…ばっかじゃないの…ッ、…わ、私がそんなこと、するわけないじゃない。……それ、で結局躾られる、とか…そんな、馬鹿みたいな話、ないじゃない…っ』
なんで、私が……
