第2章 桜の前
「それで首領、マンションの方の契約なんですが…」
「ああ、これから引っ越す?それともマンションの方も契約したままにしておこうか?」
「…首領さえよろしければ、移させていただこうかなと」
『何、わざわざ今の家捨ててまで来るつもり?やめときなさいなそんなこと、いざって時に一人になれなくなっちゃうわよ』
「いざって時も何もお前のとこに着いてねぇと意味ねぇだろって」
なんなら同じ部屋にでも住んで監視しといてやりたいくらいなのに。
少し危ない発言が聞こえた。
監視?
中也が、私を??
『へえ、監視…例えば?』
「夜更かししてねえかとか」
『私寝てないのがデフォルトだってば』
「どっか俺の知らないところで怪我してないかとか」
『怪我くらいで大袈裟なのよ一々』
「マンション内に騙されて変な奴に襲われてな『分かった、もう分かったから好きにして』…というわけなので、引き払わせてください」
首領が圧倒されるレベルの意志の強さ…というか過保護。
なんだろう、こんな感じの奴すっごく見覚えある気がする。
『そこまで深刻になる事じゃないでしょうに…家、かえらないの?』
「じゃあ…」
膝をついて、両手で捧げられるサバイバルナイフ。
斬れと。
阿呆なのかこの人。
『馬鹿じゃないの』
ナイフを突き返してその人を無理矢理立ち上がらせる。
そして呆れ果ててやはりそれを口にしてしまうのだが。
『いきなりそこまでする必要ないって言ってるのよ、たかが一人の部下のために。昨日までの生活に戻るつもりないわけ?』
「もう忘れたんだよ、仕方ないだろ」
『あっそ、やっぱり馬鹿ね。それなら家まで連れて行ってあげるから戻りなさ「じゃあ…」だからやめなさいこの馬鹿は!?』
どっと疲れた、なんなんだこの人。
あ、私知ってるかもしれないわこの執拗さは。
そうだ、私の従兄にそっくりではないか、どうして今まで気が付かなかった。
「目ェ離した隙にすぐ何か起こりそうじゃねえかお前…髪の毛一本でもいかがわしい触れられ方されたら言えよ、絶対にだ」
『…私なんかと同じ部屋に住むのに抵抗ないの?』
「どの道夜は寝かしつけなきゃなんだから一緒だろ?」
「……え、あの君達??その…夜寝かしつけるって、どういう…??」
目を点にする首領。
ああそうか、この人は知らないのだった。