第4章 培われしは藍晶石の光輝
〜妖館 三号室〜
残夏君の部屋は私とよく似てシンプルなもの。
あまり情報量が多すぎると私達のような特性を持つ先祖返りには居づらいのをよく分かっていて、私としてもまだ落ち着く部屋。
そんな部屋の扉が、ノックされる。
軽く能力を暴走させ気味になっていれば、訪ねてきた相手が誰なのかは直ぐにわかった。
その目的も、何を聞いてきたのかも…私のことをどう思っているのかも、全部。
しかし、私が分からないこともある。
何故、そのような考えに至るのか。
それが私には分からない。
どうして、私に会えてまた喜んでいるのか。
私のことをそこまで知ってまで受け入れてくれるのか。
“あんな姿”の私を知っているのに、それでもそばにい続けようと、寧ろ余計に覚悟を決めているのか。
『…入ってこないで。今、頭パンクしそうなの』
扉に背を預けてうずくまっていたため、多分聞こえる。
「……読んでる?俺の考えてること」
『読んでる、から…お願いだから、放っといて。……私は貴方のこと騙してたの。知ったでしょ…なんにも知らないフリして、他人のフリして潜り込んでたのよ。貴方という人を軽んじた行為だわ』
罪悪感が、そして拭えない恐怖心が、私を襲う。
「そんなことは無い。それに、今のお前は白縹 リアだ。…海音とは違う、白波家の令嬢でもない、ただの子供だ」
そんな言葉が、欲しかった。
元の家に未練は無い。
しかし、私という人を受け入れてくれる人が…家系の縁以外に、いなかった。
私を認めてくれる他人という存在が、欲しかった。
私を食べようとしない人が。
私を襲わない人が。
私を、ひとりにしないでいてくれる人が。
『………鱗、剥がれちゃったの、左脚』
だから、傷痕が消えないの。
「…キスしていい?お前の痛いところ…欲しいところにも、全部」
うん、とも、はいとも、言えなかった。
口にするには重すぎた。
鍵を開ければ、彼がドアを開けて、真っ暗な部屋の中に入ってくる。
抱きしめられるのに体を硬直させれば、落ち着いてと言うように背中を撫でて、安心させてくれて。
「……お前、俺に報いようとか考えてポートマフィアまで着いてきちまったの?」
『…会いたかった、だけ』
恩返しなんて、そんな大層なこと私にはできない。
せめて傍で…何か役に立ちたかった。
それくらいのこと。
それだけのこと。
