第114章 安室1※
本当は自分で選ぶべきだったのだろうが。
・・・それは僕の方ができなかった。
「せっかくなのでペアで揃えてみました。・・・嫌でしたか?」
嫌でないことは、彼女の今までの行動や表情を見ていればよく分かったことだけれど。
「・・・すごく、嬉しいです」
それを目の前にして、笑顔は作ってみたけれど。
胸は、刺すように痛んだ。
「安心しました。ひなたさんがこういうの苦手だったらどうしようかと思いながら購入したので」
・・・酷い嘘つきだ。
これを嘘だと彼女が知る日は無いだろうが、それでも罪悪感が襲ってくる。
これから無くす物に、執着を持ちたくなくて。
・・・風見に、頼んでしまった。
皿も、ソファーも、全て。
ここで彼女と過ごす思い出のようなものが増えてしまっても。
なるべく自分の中では記憶が残らないように。
そんな狡いことをしてしまった。
その後、彼女がコーヒーを飲み終えると、お風呂をすすめて。
別に何ら、やましい気持ちなどは無く、単純に彼女へすすめただけだった。
・・・その時は。
「あの・・・透さんってどうして私に敬語なんですか?」
食事も入浴も済ませ、就寝前ではあったけれど2人で小さめのソファーに腰掛けコーヒーを飲んでいた時だった。
彼女は徐ろにそんな事を尋ねてきて。
「敬語が癖、というのはありますが・・・ひなたさんが嫌ならやめますよ」
別に深い意味は無かった。
元々は彼女が依頼者という立場でもあった為、自然とそうなっていて。
・・・あとはきっと、自然と彼女と距離を取っておきたいという思いもあったのかもしれない。
あんな感情まで持っていて、よく思えたものだと自分でも思うが。
「い、嫌ではありませんけど・・・、単純にどうしてかな、と・・・」
両手を振りながら、彼女も深い意味は無いと言っているようで。
その可愛らしい仕草に思わず笑みを零しながら、妙な気持ちに陥った。