第112章 恋愛で※
「・・・・・・」
何の偶然か、ずぶ濡れになった数秒後にはスマホも完全に電源が落ちて。
・・・全てに、見放された気になった。
自分から逃げたくせに、孤独感が酷くて。
本当に自分勝手だ、と遅すぎる反省をして。
雨なのか涙なのか分からないそれを頬に流していると。
突然、私にかかる雨が途切れた。
でも、音はするから。
背後から傘を差されたのだと気付くと、その方向へとパッと顔を上げた。
「え・・・ひなた?」
一瞬、零ではないかと期待していた自分がいた。
けれどそこに居たのは。
「・・・ヒロ、くん」
彼だった。
「どうしたんだ・・・!?」
慌てる彼に、暫く呆然としてしまって。
やはり相手が自分より慌てていると、こちらが冷静になってしまうものなのだろうか。
「用事の途中に・・・雨、降っちゃって・・・」
だからこうして、笑顔は作れる。
まだ冷静さは残っているから。
「・・・・・・」
私の方へと傘を傾けているせいで、彼の肩が濡れ始めて。
どうせ自分はずぶ濡れなのだからと、傾けられたそれを元に戻そうと手を伸ばしかけた時。
「・・・ひなた」
少し低めの声で、名前を呼ばれたから。
心臓が少し、反応してしまった。
でもそれはあくまでも、身構えと緊張から来るもので。
「何か、あったんだろ」
「・・・・・・」
そこに、さっきまでの慌ては無い。
淡々と、落ち着いた様子で、彼は私に尋ねた。
その瞬間、無意識にしていた栓が、突然抜け落ちたように。
何故か一気にボロボロと涙が溢れ出た。
「・・・ひなた!?」
急に鳴き始めた私を見て、流石に彼は再び慌て始めた。
そんな彼を目の前に、大丈夫だと何度も繰り返し、雨か涙か分からないそれを、無造作に拭った。
泣くつもりなんてないのに。
彼の前で泣きたくなんて無いのに。
私が泣いたら・・・何も悪くない、零が悪いみたいじゃないか。