第112章 恋愛で※
「・・・・・・」
話す・・・か。
それが簡単にできれば、こうして喧嘩にはなっていないのだろうけど。
「・・・私、行ってくる」
「はいはい、行ってきなさい」
このままではダメなことも、分かってはいるから。
立ち上がり、スマホだけを持つ私に、志保さんは手をヒラヒラとさせて私を送り出した。
勢いよく阿笠邸を飛び出し、とにかく家まで走った。
その間にスマホの電源を入れれば、何件もの着信履歴が並んでいて。
零以外にも、風見さんからも入っている。
・・・ただの喧嘩に、風見さんまで巻き込んでしまった。
そんな申し訳なさを覚えながら、勢いのまま零へと電話を掛けた。
「・・・零」
けれど、すぐには出なくて。
留守電になると、一旦それをポケットにねじ込んだ。
時々、零と走っているおかげか、多少は体力がついているようで。
昨日帰るはずだった家まで走りきると、慌ててドアを開いた。
「・・・っは、はぁ・・・っ」
「・・・くぅん」
けれど、出迎えてくれたのはハロくんだけで。
力が抜けるように座り込み、彼の頭を撫でると、緩んだ表情を見せてくれた。
・・・ここに居れば電話には出るか、と段々冷静さを取り戻してくると、ハロくんに挨拶をして再び外へと飛び出した。
「・・・ッ・・・」
探して見つかる確率の方が低いけれど。
それでも勝手に、体が探すように動いてしまう。
零にも、風見さんにも。
何度も電話を掛けてみるが、やはり出なくて。
・・・呆れられてしまっただろうか。
零には勿論、こんな事に巻き込まれた風見さんにも。
自業自得だ。
そう思いながらも、何時間も走り回って零を探した。
辺りが暗くなってきた頃、僅かにしか充電していなかったスマホの電源も、切れようとしていて。
私の体力も底をつき、近くのベンチへと腰を下ろした瞬間。
徐ろに、体へ冷たい感覚を覚えた。
・・・雨だ。
それに気付いて顔を上げると、一気に勢いは増して。
一瞬で、ずぶ濡れにされてしまった。