第102章 ずっと
「・・・!」
声が、出ない。
正しくは、上手く出せない。
さっきまで普通に出ていたのに。
「・・・どうした」
「あ、の・・・」
・・・自分でも思う。
酷い声だ。
自分が言っているように発音できているのかも分からない。
「酷い声だな」
分かっている事を言われると、こうも苛立ちを刺激されるのか。
それを、言われたくない相手に言われれば尚更で。
「待ってろ。今、良い医者を連れて来る」
医者・・・?
ここに?
「・・・ッ」
何故か、それは嫌だと思った。
だから離した彼の服をもう一度掴み直すと、首を横に振った。
でもそれを見た彼は、いつもの笑みを浮かべて小さく笑いを漏らして。
「そんな顔をするな」
そう言って、服を掴んだ私の手を握って優しく取り払った。
「すぐに戻る」
そして、そう一言残し、静かに部屋を後にした。
取り残された後、暫くは彼の出て行った扉をただ見つめて。
次第に体の重さを感じて来ると、自然とそれはベッドへ落ちるように倒れた。
「・・・・・・」
情けない。
熱なんて出してる場合じゃないのに。
昨日のアレで気が緩んだのだろうか。
・・・だとすれば尚更、情けない。
手の甲を瞼の上へと乗せながらため息を吐くが、その息はどことなく細く感じて。
暑さと苦しさの中で短い呼吸を暫く繰り返していると、扉が数回ノックされた。
「入りますよ」
扉越しに聞こえたその声は、出る前とは違う、沖矢昴の時の声だった。
という事は、彼の言う通り医者を連れて来たのだろう。
経ったのはものの数分だったが、一体どこから連れて来たのだろう。
その姿を確認したくて体を動かそうとするが、そんな小さな動きすら上手くできなくて。
瞼の上に乗せていた手を落とすように、首を扉の方へと向けると、ゆっくりドアは開かれて。
「言っておくけど、私は医者じゃないわよ」
そう言いながら入って来たのは、何故か哀ちゃんだった。
その隣には、コナンくんの姿もあって。
「すみません、とりあえず少し診てもらおうかと思いまして」
宥めるように、沖矢さんが哀ちゃんへ声を掛けながら、こちらへと近付いてくる。
・・・もしか、しなくても。
彼の呼んだ医者というのは、哀ちゃんの事なのか。