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潜入捜査はキツイって、皆さん分かって下さいよ

第4章 被害の痕跡


隊員が窓を開け、夜の風が甘い薬の匂いを消していく。
「さん、大丈夫?」
山崎さんが座り込んだままの私を、心配そうに見ている。
「えぇ、何とか、でも、ちょっと…」
まともに煙をかけられたせいで、耐性があるとはいえ、少しクラクラする。
「だ、い、じょ…」
舌が回らない。
簪だらけの重い頭が畳に倒れる寸前、山崎さんに抱き止められたのは、多分、薬の幻覚じゃないはず。

開けた目に写ったのは、泣きそうな顔の山崎さんだった。
「さん、大丈夫?気持ち悪くない?どっか痛くない?」
矢継ぎ早の質問に、ぼんやりしたまま頷く。
「あの…私」
あれ?私いつ着替えたんだろ。
重たい着物はバスローブみたいな物になり、髪もほどかれている。
まさか、山崎さんにとかじゃないよね。
私の心中を察したのか、山崎さんは激しく首を振った。
「着替えさせたのは僕じゃないよ!月詠さんだから、気にしないで」
「…はぁ、それなら」
「っていうか、本当にごめん!ごめんなさい!だから、危ないって言ったんだけど」
「いえ、別に怪我したわけじゃないですから。それより、犯人は?」
「あぁ、沖田さん達が連行したよ。今頃は事情聴取じゃないかな」
「山崎さんは、行かなくていいんですか?」
そう聞くと、山崎さんは顔を赤らめた。
「沖田隊長が、ザキは残れって、さんのそばにいてやれって」
「…」
「あの、山崎さん」
「なに?」
「私さっき、あの気持ち悪い奴に、お尻とか触られたんです」
「えっ、あ、うん。本当にごめ…」
「だから、上書きしてくれませんか」
「…へ?な、さん、何言って」
あたふたする山崎さんに近寄る。
今夜、私は遊女だ。
着物も簪も無いけれど、女は好きな人の前でなら、遊女にも聖女にもなれる。
山崎さんを上目遣いで見つめる。山崎さんの喉が上下する。
「…僕で、いいの?」
聞いた山崎さんの目は、確かに男の目だ。
「山崎さんが、いいです」
答えた私の目も、きっと女のそれだ。
明日の朝、沖田さんに怒られたら、あの甘い薬のせいにすればいい。
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