【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第94章 〝私〟について(その2)
「……それ、なんですけど、私が貴方から離れたから、ですか?」
小さな沈黙、答えを探している間はどこか緊張してしまう。
「いえ、それだけではなくて……前にも言ったように、○○に触れたくなるから。俺たちは、今の○○が想像できないほど、触れ合いが多かったから。……話せないことも、話したくないことも、触れ合っている瞬間だけは――満たされて、幸せだった」
触れ合い、と言葉を濁しているが……まあ、つまりそれは体の関係のことなのだろう。
「私ともそうなったら、思い出せたりするんですかね」
「っ…………それは、多分、ない」
「それは、どうして?」
「俺たちが最後に触れ合った行為は、決して優しい行為ではなかった。苦しくて、けれど、離せなくて。俺たちは、順調とは言い難い関係で。俺も君に、君は俺に、話せないことが増えていっていた。――記憶をなくしたのも、それが、〝○○〟の選択だと、俺は考えているから」
「……記憶を自分で、と?」
「○○が俺を忘れることは、……それほどまでにありえないから」
難しい関係なのだと、ぼんやりと伝わってくる。
自分にはまだ理解ができないけれど、思いだすこともできないけれど、でも──
「でも、安室さんは私に記憶を取り戻す手伝いをすると言ってくれた」
「ああ」
「あれは、あの場の建前?」
「……半々だな。建前もあるが、本心もある。○○に思いだしてほしい、だけど、…………以前の君が愛していたのが、俺だけじゃないから」
「え?」
「俺がこの世で一番嫌いな男と、……君は恋仲だった。君は認めていなかったが、肉体関係があったは確かだ」
……言葉が、でなかった。
自信をもって愛し合っていて、でも、そのうえで……彼女が、〝私〟が男と付き合っていた?
「……君が家を出たとき、コナンくん以外の男と会っていなかったか」
それが、答えだった。
あの時感じたのは──
「……君も、沈黙か」
分からない。
分からないけれど、分かってしまった。
「話したかったのは、確かめたかったからだ。……僕が今の君に伝えられるのはそれだけ。この先、記憶を取り戻したいというのなら〝安室透の依頼者〟として対応はできる。だが、俺とはこれ以上は無関係だ」
これ以上は、もう二度と。
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