【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】
第94章 〝私〟について(その2)
「きっと、その理由を貴方はご存知なのでしょう?」
貴方が自信を込めて、愛し合っていたと言えるのだから。
「……するはずないだろ、今更。どう足掻いたって、○○を嫌うことはできない」
だから頭を抱えてるんだ、と続くのは本心。
「詳しいことは今の貴女には控えますが、事情があって僕は〝安室透〟と名乗っています。貴女が呼ぶ〝零〟は、……降谷零は、僕の本名です。そして、貴女と僕は、警察学校時代の同期で恋人同士でした」
「え」
「同期が亡くなったから貴女が警察を辞めたというのは本当です」
僕らにとって大事な存在が亡くなったんです、と。
淡々と話すにはあまりにも温度差があって。
「卒業を機に別れてはいたのですが、……そうですね、僕も貴女も、分かりやすく言えばお互いを引きずっていたので、再会して付き合うことを選びました。今は、安室透の恋人として」
まるで、物語のあらすじを聞かされてるような話し方で。
どこか他人事のような話し方は、まるで、感傷に浸らないようにしているように聞こえて。
「それが、今の僕らの本当の関係です」
「…………安室さん、と呼んだほうがいいってことですか?」
「二人きりの時は、好きなほうで呼んでいましたよ。人前では安室と呼んでください。今の○○は、分けないほうが間違えないのでしたら安室でお願いします」
「なら今は、……零と呼ばせてください」
その選択をされると思わなかったのだろう。
少しだけ目を見張ってから、「ああ」と柔らかく頷いた。
「ダッシュボードの中、○○の通帳類が入っているから受け取ってくれ」
「……あ、ありがとうございます」
「すぐに渡さなくて悪かった」
「…………あの、関係ないこといいですか」
「ああ」
「さっきから口調が違ってて、その…………敬語が気持ち悪いです」
キョトン、としてから――それから、ははっ、と声をあげて大きく笑う横顔に、呆気にとられてしまう。
「悪い。〝安室〟で話さないと、今の○○との距離感を間違えてしまいそうになるから……」
だから、と言われてそれが彼の中での〝分け方〟なのだと確信に変わる。
安室透としての彼と、降谷零としての彼の、〝分け方〟。
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