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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第93章 〝私〟について(その1)


手を繋いで、腕を組んで、道を歩く。
これでもかってほどくっついて――そんな光景が、よぎったが現実は当然違う。
安室さんは階段を降りるまでは繋いでいた手を、道に出ると同時に解いた。

「連れ出してすみません」

外の空気が吸いたくて、と続ける彼の表情から読み取れる感情がない。人当たりの良い笑みなのに、……すごく、違和感を覚える。

「お酒まだありましたもんね」
「ええ、まあ、そうですね」
「飲みすぎたら蘭さんに叱られますよ」
「はは、それは困るなあ」

思ってもいない言葉。
空っぽのやり取り。
それでも、この人の隣にいて、声が聞けて――

「記憶をなくす前の私は、本当に安室さんが好きだったんですね」
「……え?」
「いえ、そう感じるなって。……あ、そうだ。次は安室さんからみての私ってどんなふうな人物だったか、戻ったら教えてくださいね」

自分のことだとまだ感じることはできないけれど、でも、大事にされていたのが伝わる
隣を歩いていたはずの安室さんが消え――振り返ると、足を止めていた。

「安室さん?」
「……」

無言。
それから――

「いえ、僕の話はお手伝いが進んでからにしませんか? 知らない男と恋人だったことを聞かされるのは気分が良いものではありませんからね」
「私は、」

大丈夫だと言おうとした。
事実、大丈夫だったからだ。
貴方と付き合った記憶がないのだから、記憶を取り戻す手伝いをしてくれと頼んだのは私なのだから。

「……すみません、僕が時間をいただきたいです」

次にお会いする時には話せるようにしておきますので、と笑っているのに泣いているように見えて――

会話が出てこなかった。
なんのために二人で行ったのか、安室さんは探偵事務所の前まで送ってくれて。

「すみません、急用が入ったので僕はこれで。ご依頼の件は改めてスケジュールご連絡しますね」

そう一方的に告げて走り去ってしまって。

「あれ、安室さんは?」
「それが……なんだか急用が入ったみたいで」

――それから、毛利先輩とお酒を深い時間まで飲んでから、さすがに学生の子が寝ている場所に行くのは忍びないのでリビングで眠った。


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