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【DC】別れても好きな人【降谷(安室)※長編裏夢】

第93章 〝私〟について(その1)


知らない部屋だけど、とても居心地が良くて。
靴を脱いで、案内されたリビング。コナンくんと毛利先輩が座って、――キッチンに立つ蘭さんのほうに向かった。

「手伝いいりますか?」
「いいんですか? ありがとうございます!」

病院に来ないでと、言った私に変わらず笑いかけてくれる蘭さんに胸が痛む。

「○○さん、何飲まれます? お父さんはー?」
「俺はビールー!」
「はーい。ね、自分で取りには来ないの、いつも。○○さん持っていってもらえます?」
「あ、はい、もちろん」

言いながらもどこか楽しそうな蘭さんの様子に、少し戸惑っている。
向けられる優しい視線。
冷えた缶ビールと、グラスを二つのせた御盆を渡される。

「これ実は、○○さん用のビールグラスです」

蘭さんが渡してくれたグラスは、薄ピンクの細身のビールグラス。

「実は父、○○さんと飲めるの嬉しくて買っちゃったんですよ。でも○○さんに言うのが照れ臭くて言えてないんです」
「……使ったことは、ないんですか?」
「使ってます。なので、○○さんが来られたときはいつもこのグラスなんです」

覚えのないグラス。
だけど、そう、……迎えられているのだと感じた。

「○○さん? 大丈夫ですか?」
「え?」
「すごく、泣きそうな顔をされてるから」

……気づいてなかった。
だけど、ここは拒んでいい場所ではなかったのだとわかってしまった。気づいてしまった。

「……蘭さん、あの、」

拒んでしまって、傷つけてしまって――

「病院では、ごめんなさい」

親しみを込めて向けられる視線が嫌だった。
知らない人だったから。まるで、忘れていることを責められているように感じたから。
だけど、でも、そうじゃなかった。

「頭下げないでください! 仕方ないです、記憶がなかったら、……でも、こうしてまた戻ってくれて嬉しい。ありがとうございます」

優しい人。

「……お父さんも寂しがっていたので、よかったら父とゆっくり付き合ってください」

飲みすぎない程度に、と念押しをするように付け加えられた言葉に笑ってしまった。


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