【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】
第6章 冬霞
埃が夕日の光を含みながら、宙をゆらゆらと舞う。
古書が集められた小さな書斎は、決して人に知られてはいけない記憶ばかりを残している。
覚えているだろうか、ここは赤葦が命の確認をする場所。
自分の意志で解放することのできない性を、彼はここで慰める。
「貴方はただ、光太郎様の幸せを願っていた。だから私をこの檻に閉じ込めた」
小さな窓から見えるのは、冬を越すために剪定されて裸になった薔薇たち。
駒鳥の最期を受け止めた時はそれでも赤や白や桃色の花を咲かせていたのに、今はもうただ寒々しい姿でしかない。
「私も光太郎様の幸せを願っております」
でも・・・
貴方が願うように光太郎様が幸せになっても、私が願うように光太郎様が幸せになっても、結局は光太郎様を苦しめる結果にしかならないのかもしれない。
いずれにしても、光太郎様が一番知りたくないだろう事実を、貴方と私が一番知られたくなかった事実を、お伝えしなければならぬ時が来る。
「だから私は貴方が心から憎いのです、日美子様」
貴方は紛れもなく“木兎家の光”だった。
誰もが貴方を愛し、貴方に憧れた。
でも貴方は光臣様を裏切り、木兎家を裏切り、そして私という存在をこの世に誕生させてしまった。
「きっと八重様に貴方の代わりは務まらないでしょう」
でも、光臣様と木兎家を裏切った貴方とは違い、八重様は光太郎様も木兎家も裏切ったりはしない。
そう確信が持てるほどに、あの御令嬢は健気で潔い。
きっと貴光様の御気質なのだろう。
「貴方の犯した罪は重い・・・」
愚かな貴方の裏切りさえなければ、八重様は本家に呼ばれることは無かっただろう。
英国なり、母親の実家なりで、平民として平凡な人生をまっとうできたはず。
それなのに、貴方と光臣様のせいで狂ってしまった運命の歯車は、光太郎様と八重様を引き合わせてしまった。
「・・・・・・・・・」
赤葦の懐にある懐中時計が六時を指そうとしている。
もうすぐ夕餉の時間だ。
早く階下に行かなければ光太郎が心配して屋敷中を探し回るはず。
赤葦は深呼吸を小さくすると、招待状をポケットの中にしまい、「あかーし!」と叫ぶ光太郎の声が聞こえてくる数秒前に書斎のドアを開けていた。