第5章 ※三角形 case3※
踵の高い靴を履いて、颯爽と歩いている女性に憧れていた。
それを私がやると、大女である事が強調されるだけだと分かっていた。
でも、やっぱり履いてみたかった。
そんなモヤモヤをずっと抱えて、買うのすら躊躇うのに、憧れの靴をつい見てしまうのが癖になってて。
その時だけは、本当にデザインが好みで、心の底から欲しいものがあって。
その靴をきっかけに、ヒールの高いものを履けるように、なりたかった。
あんなに長く悩んだのは、誰かに背中を押して欲しかったんだと思う。
「…あれ、リエーフだったんだね。あの時は、有難う。」
「俺は思った事言っただけだって!決めたのは、さくらだろ?」
「でも、誰も声掛けてくれてなかったら諦めてたよ。多分ヒールの高い靴履けるようにならなかったと思う。」
間違いなく、私の背中を押してくれたのは、リエーフで。
「カッコいい女の人って感じで、思った通り、高いクツも似合ってるぞ。
俺が声掛けて、大正解だったな!」
お世辞じゃない真っ直ぐな言葉だからこそ、ストンって体の中に落ちてくるように入ってくる。
あの時も、今も。
駄目だと分かっていても見てしまった瞳。
真っ直ぐに落ちてくる言葉。
全てに囚われそうな気持ちを、罪悪感がなんとか留めていた。