第6章 秋は夕暮れ①
ハッ!
笑わせんナ、、、
沙織が出ていった後、1人教室の隅に取り残された荒北は自分の足を見ながら笑った。
沙織の机の前に立った時、荒北は緊張でいっぱいだった。
それでも沙織から目を逸らさないように必死だった。もしかするとそれは睨むに近かったかもしれない。
荒北は何度も、、、休憩時間になる度に本当は話しかけたようとした。
しかしいざ話しかけようとすると何と声をかければいいのか分からなかった。
沙織がどんな顔で自分を見るのかそれを知るのが怖かった。
そんなことを考えているうちに、やたら距離の近い名前も知らない女子達に絡まれて、結局一度も沙織の顔を見ることすらできなかった。
昼休み、そんな自分への苛立ちが最高潮に達して、色んなものを吹っ切った。
自分に対するどんな罵声も受け入れるつもりだった。
お前が望むなら何度でも謝る。
お前が望むことを全てしてやる。
だから、、、
また俺の前で笑ってくれナイ、、、?
そして荒北は沙織の腕を掴んだ。
絶対に離さねェ。
それは情けない自分への覚悟と戒め。
離したら自分が一番逃げてしまいそうだったから。
思いっきり掴んだその腕は思っていたよりもずっと細く柔らかかった。
だけど、
「離せよっ!」
そう怒鳴った沙織の顔を見た瞬間、荒北の覚悟はぐらりと揺らいだ。
「誰がテメェなんかと話すかよ!」
それは涙とともに沙織の口から放たれた強い拒絶の言葉。
荒北の手はいとも簡単に振り払われた。
バンッ!
そして沙織は思い切り扉を開けて教室から飛び出していった。
荒北はその扉をしばらく呆然と見つめることしかできなかった。