第2章 砂漠の月71~150
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放課後、晴久は月子を部屋に誘って二人で寛いでいた。
部屋では月子を膝に抱き上げて座るのがそろそろ定番になりつつあり、今日も月子を膝に抱き上げてベッドに座り込んだ晴久がベッドサイドから紙袋を持ち上げて月子の膝に置く。
「これ……」
「この間買ったやつ。休みの日に一緒に出掛ける時は、これ着けてくれ」
「開けてもいい?」
「おう、もちろん」
渡された紙袋から可愛らしく包装された箱を取り出すと、そっとリボンを解き包装紙を破らないように丁寧に解いていく。
箱をそっと開けるとシンプルだが可愛らしい印象を受ける時計が入っていた。
月子は箱の中からそれをそっと持ち上げると自分の左手の手首に着けていたブレスレットを右手に付け直すと、何もなくなった左手首に嵌めてみる。
「可愛い……」
「気に入ったか?」
「うん! ありがとう、晴久さん」
「どういたしまして。……実は、もう一つもらって欲しいんだが……」
「え?」
満面の笑みで頷き、手首に着いた時計を眺めていた月子は、少しだけ迷っているような声で言われて顔を上げた。
見つめ合った晴久の表情はどこか申し訳無さそうにも見えて、理由がわからず首を傾げるとベッドサイドに手を伸ばした晴久が使い混んだ雰囲気の革ベルトの腕時計を取り上げた。
それは大きさ的にメンズだとわかるが、デザインはどちらかといえば中性的な印象を与える物で文字盤は黒、文字は白いローマ数字、枠は真鍮でレトロな雰囲気すら感じる物だった。
「俺がよく使う時計の一つなんだが、学校に居る時はこれを着けてて欲しいんだ」
「え……でも、それじゃ……」
「ホワイトデーのプレゼント考えながら雑誌見てたら、男物の時計を贈るってのがあってな。独占欲激しいとか、色々思うとこはあるんだが最近月子を見る男共の視線が鬱陶しいし、釘になるもんは一つでも多くしておきたいんだ」
情けないけどな、と自嘲の笑みを浮かべる晴久に、月子はもう一度渡された時計に視線を向ける。
使い込んた革のベルトは色に深みが出ていて肌への馴染みも良い、文字盤も文字も、少しだけ変わった雰囲気のそれは月子が着けても浮かないだろう。