第3章 木の葉に馬鹿を突っ込めば
…おいネジ…。それじゃ雑炊が好きなだけになっちまうぞ…。メンドくせぇから絶対言わねえけど。
内心ネジに突っ込みを入れながら、シカマルは険しい顔で思い耽った。
ネジは牡蠣殻と面識がある。以前ガイ班が砂へ牡蠣殻を捕らえに行ったのをシカマルは知っている。
そもそも五代目は、始め、当時まだ木の葉にいて薬事場の運営を助けていた磯の藻裾に牡蠣殻を捕らえるよう言い付けた。しかし藻裾はその話を蹴って木の葉を出た。代わりに出張る事になったのがガイ班。
しかし結果ガイ班も牡蠣殻を木の葉に連れ帰る事はなかった。
牡蠣殻は大蛇に変じた大蛇丸に呑まれ、彼共々失せたのだ。だから、草に居た事が確認されるまで、牡蠣殻は行き方知れず、死んだかとされる向きにあった。
大蛇丸と消えたというガイ班の報告を受け、以後五代目は牡蠣殻の事を口にしなくなった。牡蠣殻の居場所が知れた後でさえ、五代目は牡蠣殻に言及していない。
少なくともシカマルの知る範囲では。
だからこそ里の中核で牡蠣殻について何かしらの思惑の絡みがあっただろうと容易に想像がつく。
今の立場がもどかしいと思わないでもないが、それは大した問題ではない。
班は上手く任務をこなしているし里は今のところ大難を抱えている節もない。相談役の肩書を戴かされた薬事場の皆とも大過なく睦み、飯は旨いし世は並べて事も無しなのだ、今のところ。
文句を言う筋合いはひとつもない。
そこへ来て伊草、そして波平、挙げ句に牡蠣殻と素性の知れぬ幼子が現れた。
メンドくせぇ。
「難しい顔をしておるなえ?」
伊草がシカマルの顔を覗き込んだ。
「何を考えとるのかな、もし」
「…メンドくせぇと思ってるだけですよ」
「世話をかけてすまなんだえ」
「そういうこっちゃなくて…」
フとシカマルは伊草を見返して目を眇めた。
「伊草さん、アンタさっき、牡蠣殻さんを何処に連れてく気だった?」
「何処って」
伊草はにっこり笑って髭を撫でた。
「言うた筈よ。庭」
「庭」
「そう。庭」
「何しに庭に?」
「頭を冷やす為かえな?」
「逆上せた訳じゃねぇでしょう?」
「逆上せたのかも知れんぞい?」
「それは体の質に関係ねぇんじゃねえのか?」
伊草がチラと煩わし気な表情を浮かべた。身を屈めてシカマルに覆いかかり、口角を下げる。
「そういう質かも知れんわえ?」
