愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
取手を握ったままの僕の手に、翔君の手が重なった。
「ねぇ、智?おれも同じ気持ちだよ?どんなことがあっても…、それが例えお互いが不幸になることだったとしても、おれは智とずっと一緒にいたいし、智を愛する気持ちは変わることは、永遠にないんだよ?」
それくらい真剣なんだ…
僕の耳に、その言葉通りの真剣な声と、まるで翔君の燃えるような感情が籠った熱い息が吹きかかり、あんなにも固く心に誓った決意ですら揺らいでしまう。
駄目なのに…、今振り返ってしまったら…
その涙を見てしまったら…
もう二度と引き返すことは出来ない、って分かってるのに…
やっぱり僕は…
「愛してる…、翔君を…心から…。だから…っ…」
振り返った僕を、翔君の広い胸と、あのキャンディーのように甘い、でもどこか男らしい香りが包み込んだ。
ああ…、この匂いだ…
僕はいつだってこの香りに包んで欲しかったんだ…
翔君だけが持つ、僕を幸せにする香りに…
「一緒にいたい…。ずっとずっと…翔君とずっと…」
僕の幸せは、翔君の腕の中にしかないから…
「うん…、一緒にいようね? ずっと、ね?」
胸に顔を埋めた僕の顎に手がかかり、ゆっくりと上向いた僕の唇に、翔君の熱い唇が重なった。
触れた場所から、翔君の気持ちが流れ込んでくるようで、触れて直ぐに離れてしまった唇を追うように、今度は僕の方から唇を重ねた。
「智、本当にいいんだね?何もかも捨てて、おれと逃げてくれるね?」
「僕には何もないから…。翔君さえいれば、僕はそれだけで他には何もいらない。でも…」
「でも…、どうしたんだい?」
出来ることなら、今直ぐにでもここから僕を連れ出して欲しい。
でもその前に確かめなくてはならないことがある。
「澤に会いたい」
「澤…にかい…?」
「話がしたい…いや、確かめなきゃいけないんだ」
あれ程までに主に対して従順だった澤が、何故その主に向かって刃を振り下ろしたのか…
その理由を聞く必要があった。