第74章 キミのトナリ オレのトナリ(及川徹)
今にも途切れそうな意識でも
自分の家には帰れるようで
見慣れた景色を無心で歩く
あと数メートル
何も考えず倒れ込める
そう思ったその刹那
「姫凪!!」
孝ちゃんの声
「大丈夫か!?
おい、姫凪??!」
掴まれた腕
虚ろな意識の中に
さっきまでの記憶が
フラッシュバックして
『止めて!離して!!』
思いっきり孝ちゃんを突き飛ばしてしまった
「姫凪?どうした?
そんな青い顔して…」
突き飛ばした事を責めず
穏やかに話しかけてくる声も
今の私には苦しいだけ
『放っておいて…お願い…』
距離を縮めようとする孝ちゃんから
離れて後退る
「放っておけないのは
さっき言ったべ?
姫凪、俺は何にもしないから
話しなって…なぁ?
及川に、なにされた?」
私の言葉を遮り
また一歩ずつ距離を縮める孝ちゃん
徹の名前にまた傷が疼く
思い出したくない事ばかり
思い出して
上手く息が出来ない