第3章 2 暖かな黒の中で
あぁ、これは夢なのか。
眩しいほどにこの光輝く白い空間を、私はきっと知っている。
「もう時間がない、ごめんね、少しお別れだ……。」
そして、悲しそうな顔で私を見る、それは美しい空色の瞳も。
酷い耳鳴りがする。
三半規管が狂ったように、目眩がして一人で立っていられない。
「ねぇ、もう一度聞くよ……僕のものになってくれる?もし、君が僕を受け入れてくれるなら君をあんな場所へ送る必要もないんだ。」
あぁ、やっぱり貴方の言っていることは分からない。
ちゃんと教えて、あんな場所って一体どこなの?
貴方のものになるって、どういうことなの?
ガンガンと頭が割れそうな痛みに堪えるのに必死な私はただただ左右に首を振り続けた。
「そう……いつかは、僕だけのものになってね。」
ほら、そうやって貴方は自分で話を進めてしまう。
青く済んだ空に次々と亀裂が入る。
ガラスの割れたような音が響き渡り、ばらばらと形の無い欠片が空から雨のように降り注ぐ。
空に空いた大きな穴からは、淀んだ黒い黒い煙が入り込んできた。
酷くなる耳鳴りが鐘のように頭に響き渡る。
「……ここはもうダメみたい。もう、これ以上は君には耐えられないから、君をある場所に送るよ。本当はあんなところに君を残していきたくないのだけれど……流石の僕でもこの状況で君を守りきれるか分からないんだ。」
まって、何の話をしてるの。
私はまだ何も聞けていないのに。
貴方のことを、まだ何も分からないのに。
「少し、僕のことを忘れちゃうけど……また逢った時、全部思い出せるから。……大丈夫、君はもう奴等には見付けられないよ。だから、僕が迎えにいくまで待ってて。」
まって、お願い
私は、まだ貴方に聞きたいことが沢山あるの
この世界のこと、まだ少しも理解出来ていないのに、貴方がいなくなってしまったら私は……
空間に今迄で一番大きな音が響く。
ガラス張りの部屋の窓を一度に割られたかのような衝撃。
美しい目の前の瞳と同じ色の空は、もう無くなっていた。
「じゃあね……アンリ、必ず、迎えに行くよ。」
その言葉を最後に強い光に包まれて、私は何も見えなくなった。