第5章 purple
「…松本、くん」
「……」
私に背を向ける彼のTシャツの袖を
小さく引っ張るようにするが
こっちを向いてはくれなくて。
「こっち向いてくれたらいいものあげる」
そう言うと小さく振り向き
視線だけを私にくれた。
「お誕生日、おめでとう」
メンズブランドの袋を松本くんの
背中に掲げるようにして見せた。
「…え」
「…まさか、バレるとは思わなくて
…早めのプレゼントだけど
良かったら」
「…ちょっと待ってこれ」と彼が私から
それを受け取りブランド名を見て驚く。
「…昨日の用事って、まさかこれ?」
上目遣いで私を見る彼に
「うん、サプライズ大失敗」と笑った。
言葉を詰まらせて
申し訳なさそうにうつ向く彼に
「って言っても、
衝動買いなんだけどね」
とネタバラシ。
「衝動買い?」
「うん、似合うと思ったら
レジに並んでた」
なにそれ、と笑った松本くんが箱を開けると
彼が普段は使わない、
シンプルな黒のネクタイ。
「…ごめんね、あんまり使い道ないのに。
もっとちゃんと「なんでわかったの?」
松本くんが目をキラキラさせて
私を見る。
「・・・え?」
「俺、黒のネクタイ欲しくて
買いに行こうって思ってた」
「え、ほ、ほんとに?」
「うん、まじ!すげえ、めっちゃ嬉しい」
へへへ、とネクタイを見つめて
笑う彼に驚いた。
今、私のプレゼントで
子供っぽい表情をする松本くん。
だけど確か、サプライズは苦手で
反応が悪い自分を気にしていたはず。
そんな彼が
100点満点の反応をくれている。
本当に喜んでくれたんだ、と
自分に自惚れてしまう。
「…ふふ、良かった」
「さん、センスいいじゃん」
とさっきまでの子供のような顔が消え
偉そうなことを言うと思いきや
「あー楽しみ。早く使いたい」
だなんてサンタさんから
プレゼントを貰った子供みたいな顔をして。
END.
「機嫌、直してくれた?」
「え?何が?」
「・・・(うん、よかった!)」
松本くんは何をするにしても
自覚がないことが多いです。