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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




『やっぱりいっちゃんの顔、見るのが
静には一番、薬になるみたいね。
ここはいっちゃんに任せて、
私はそろそろ帰ろうかな。
また、明日、来るから。』

『綾、ありがとう。』

『綾ちゃん、マジでサンキュ。』

小さく手を振って綾ちゃんが出ていき、
ドアが閉まるとすぐ、
笑顔で手を振り返していた母さんが
俺に向かって言った。

『…心配かけて、ごめんね。』

『受験に出掛ける日に倒れるとか、
マジ、あり得ねぇだろ。心配かけすぎ!』

軽く返したつもりだったけど、
母さんの声も顔も、笑ってはいなくて、
ドキッとする。

『ちゃんと、わかってたはずなのに、』

独り言、みたいで。

『多分、先に向こうがいなくなることも、
そうなってもお別れとか出来ないことも、
残された後のことも、
ちゃんと考えてやってきたつもりなのに、』

真っ白い布団の上に、力なく置かれた手。
その手を見ながら、ポツリポツリと、
俺に聞かせてる感じでもなく、

ただ、
言葉が、気持ちが、ポロポロと。

『いざとなったら、ダメね。
伝えたかったことがいっぱいあるし、
やりたかったこともいっぱいあるし、

今までだってほとんど会えなかったのに、
もう二度と会えないと思った途端に、
気が遠くなりそうなくらいの後悔の嵐。

安心してもらいたくて、
認めてもらいたくて、
ずっと頑張ってきたけど…

もっと
困らせたり心配させたりすればよかった。
そしたらもっと会えたのかもしれない。』

どんなに悔やんでも、
もう、どうにもならないことばかりで、

自分で選んで生きてきた道だろうけど、
後になってみないとわからないことも
たくさんあって。

『一静と綾のこともね、
あのとき、本当に腹が立ったのよ。』

え?
き、急に、その話?
コタツで寝てたってことで
みんな、丸くおさまったはずでは?!

思考がしどろもどろになって何も言えない。
…けど、
俺の返事とかは、どうでもいいようだ。

『だけど、一静に言われた通り、
あたしだって威張れた立場じゃないから。
その時はとりあえず黙ったけど。でも、』

でも、なんだ?



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