第142章 あなたにもう一度後日談(3)信長様視点
着替えを終えたひまりに俺は手招きし隣に座らせると、酌をするように指示をする。
「まだ、呑まれるのですか?」
トクトクと酒を注ぐ音と、心地よい声に俺は何ともいえない気分を味わい盃に口をつけ一気に吞み干す。
ひまりは再び酌を要求する俺に「お身体大事にして下さいね」と言い、家康に向ける時とは別の笑みを俺に向けた。
「……しかし、まさか貴様が本当に天女であったとはな」
「……信長様は出逢った時、どちらの時も私に、まるで天女だな。って仰いましたよね?」
そう言えばそのような事を言ったな。と、俺が言えばひまりは愛らしく手で拳を作り口元にあて、クスクスと笑う。
「……本当は娘ではなく、違う形で側に置くつもりだったがな」
「え??」
キョトンと可愛らしく首をかしげる姿に、流石に酒が回ってきたのか無性に触れたくなり一房髪を掬い上げ……熱い視線を一身に注ぐ。
しかし……。
「信長様……?」
(……やはり、家康を見る瞳とは違うな)
ほんのり染まった頬は一瞬勘違いをしてしまいそうになるが、真っ直ぐに俺を見つめ返す瞳は純粋で……そこに、情熱を含んではいない。
(俺も無駄に女は抱いておらんからな)
嫌でも解る。
俺は掬い上げた髪を指で滑らし、その手を引っ込め代わりに懐から箱を取り出すと、ひまりの手に乗せる。
「これは………?」
「『くりすますぷれぜん』と、いうやつだ。俺も首巻きを貰ったからな。その返しだ」
俺宛に添えられた文の下には、家康と色味の違う首巻きが置いてあった。他の者はどうやら武運の守りだったようだがな。
ひまりは今開けても良いか尋ね俺が顎を動かし返事をすると、遠慮がちに箱を開け中身を取り出す。
「あっ……紅ですね!容れ物も色も素敵………ありがとうございます!」
「普段、桜色ばかりつけておったからな。そろそろ真紅が似合う女子になれ」
「ふふっ。頑張ります」