第123章 あなたにもう一度第三幕(11)
私は湯浴みを終え、襖の前で一度立ち止まる。どきどきと鳴り出す鼓動を落ち着かせるように息を吸い、何度も深呼吸を繰り返す。
(緊張する……)
久々に家康に触れて貰える。
そう思うだけで胸が熱くなって心臓が今にも壊れそうな程、激しく動く。
(今夜で最後………)
熱くなった胸が今度は苦しくなり、忙しく感情が揺さぶられ……目をぎゅっと瞑り、家康の事だけを考える。
ーーこれからも、会って欲しい。
あの時と同じ言葉。あの言葉はもう少しで涙が溢れそうになるぐらい、凄く嬉しかった。
どんな私でも愛してくれる。
その気持ちが凄く伝わってきて、見えなくても家康とちゃんと瞳が合った気がして……抱いて欲しいとお願いしたら、真っ先に私の心配を。
ーー本当に、俺なんかが触れていいの?
無理をしてないか何度も優しく聞いてくれた。何故そんな事を言い出したのか、きっと不思議で仕方なかったはずなのに……。
(家康を傷付けるかもしれない……でも……)
ずっと色んな事を悩みながら、それでもやっぱり後悔したくない。
「………失礼します」
私は襖を開き声を掛けながら、部屋に入る。
結い上げた髪から、雫をポタポタと落としながらゆっくり襖を閉め……その場に座りこむ。すると近づいてきたのは家康の香り。
「怖くない?本当に……良いの?」
それと同時に心配そうな声と、全身に優しいぬくもりが届く。見えなくても、家康がどんな表情をしていてどんな仕草をしているか、声を聴けば私は解るから……何一つ怖くなんかない。