第102章 あなたにもう一度第二幕(1)
私は咄嗟に背中を向け、肩に掛けてあった羽織を頭から被る。
頭の中が混乱して、夢か現実か何も解らなくなって身体がふるふると震え出す。
「……貴様、何処から来た?」
(こ、この声は……信長様!!)
私はぎゅっ、と目を瞑りさっきまでの状況を思い出す。
野原に居て、約束して、そしたら家康が急に頭を押さえながら屈んで……それから佐助君の声が聞こえて……気付いたら木の上にいて……落ちたら若返った家康が目の前に居た。
(だめっ!全然わからないよっ!)
「木から落ちるぐらいだ。間者では無さそうだな」
そんな間抜けな間者が、この戦国に居たら世も末だ。
信長様がそう言って、砂利を踏みながら近づいてくる足音が聞こえ、思わず身体がビクッと跳ねる。
「………名は何と申す」
血の通っていない、低い声がすぐ後ろからして私は必死に頭を回転させる。
(二人の反応を見る限り、まだ出逢う以前なのは解る)
それなら、正直に話したら未来が変わってしまって大変な事になるかもしれない。
(何とか誤魔化さないと!!)
私は出来るだけ落ち着いた声で、
「えっと……記憶がないので、名前も何処から来たのかも解りません」
自分で言っておきながら不自然過ぎる言い訳に、情けなくなる。
(ばかっ!これだと、自分で怪しい者です。って言ってるのと同じだよ!)
バッ!!
突然真っ暗だった視界が、少しだけ明るくなって思わず振り返り顔を上げる。
すると羽織を持ち、ニヤリと笑う信長様がうっすら見えて……。
「まるで、天女(てんにょ)だな……なら、今宵から貴様を天女(あまね)と呼ぶことにする」
「え?……あま、ね?」
その名前に思わず反応して、聞き返してしまう。
「行く所がないなら、この離れに住み家康の相手をしろ」
(え…………?)
「なっ!!……こんな得体の知れない女、無理です」
「……同盟を組んだ今、俺の命は絶対だ」