第94章 今を生きる
「俺が話す昔話に、最初はぼんやりとしていた主だったが、感じていた既視感の正体を知るに連れて、花が咲くように次第に明るくなっていく表情は今でも忘れられないな。嬉しそうに抱き付いてきた主を抱き締め返すと、俺の背中に回された小さな手が、胸に空いていた穴を塞いでいくようだった。」
「おぉ、それでやっとめでたしめでたしなんだね!全部戻ってよかったな、三日月さん!」
「そうだ、全部元通りだ。俺の気持ち以外はな。」
「へ?」
「一度目二度目ときて、俺の主への気持ちは増えるばかりさ。しかも自分の時代から帰った主ときたら、あの吹っ切れたような笑顔…はぁ、どうしてくれるんだ。」
溜め息をついて、空になった茶碗の底を睨む。