第94章 今を生きる
「胸にぽっかりと穴が空いたようだった。人の形である事が悔しかった。刀のままなら知らなかった感情だからな。…俺に笑い掛ける主は、主だが、俺の知る本当の主ではない。それでも愛しくて仕方がなくて、まるで胸が締め付けられるようだった。」
「それで…二度目に繋がったのはどうして?」
「ある時から主が体調を崩すようになってな、精神的にも不安定になる事が増えたんだ。何やら既視感を感じているらしいと歌仙に聞いた時は、悩んでいる主には悪いが嬉しくも思った。…そんな代わり映えしない毎日を過ごしていたんだが、ある朝、ついに俺が鍵の役割を果たす時が来たんだ。」
「鍵の役割?」
「ああ、今のように主に昔話を話して聞かせた。」
その時を思い出しているのか、嬉しそうに笑う三日月さんにはさっきまでの寂しそうな感じはもう無い。